
現代においては、従来の漆を用いる金継ぎよりも、パテや石膏を使う金継ぎが人気を集めています。これは「簡易金継ぎ」と呼ばれ、比較的手軽に金継ぎにチャレンジ可能です。本記事では、金継ぎにおけるパテの役割やパテ選びのポイントを紹介します。簡易金継ぎに関心がある人は、ぜひご一読ください。
金継ぎにおけるパテの役割
金継ぎにおいてパテが必要となるのは、すべての器に共通ではなく、破損の状態によって使用の有無が決まります。主に欠けた部分の肉付けや、割れによって隙間ができた箇所の補修に使われます。
接着だけで補えない隙間の補修
割れた破片がすべて揃っておらず接着だけでは完全に隙間が埋まらない場合、または細かいヒビが残ってしまう場合は、パテを使ってその不足を補う必要があるのです。
パテ不要な場合と必要になるケース
一方で、割れた器を接着した際に破片同士がぴったり合いヒビ目もへこみも見られないような場合には、パテを使わずに修復が完了することもあります。
ただし、実際に接着してみた後に、ズレや隙間、水漏れなどの問題が生じた場合は、その時点でパテの使用が必要になります。
ヒビや剥がれの補修にも有効
割れはしていないものの、ヒビの一部が欠けていたり、剥がれが見られるような場合もパテで補修するほうが効率的です。漆を何層にも塗り重ねることでへこみを埋めることも可能ではありますが、時間がかかるため、パテの使用によって作業効率を高めることができます。
欠けやパーツの再形成への応用
器に明らかな欠けがある場合には、ほぼ確実にパテが必要となります。欠けた部分だけでなく、取っ手や注ぎ口などが完全に失われてしまった場合にも、パテを使って形状を再現することが可能です。
たとえば、急須の注ぎ口、徳利の口、置物のパーツなどが欠損しているケースではパテを用いた再形成が効果的です。
エポキシパテの使い方
金継ぎに使用されるパテの中でも、エポキシパテは非常に扱いやすく、粘土のように手で形を作ることができるのが特徴です。小学生でも使いこなせるほど扱いが簡単で、初心者にも適しています。ここからは、そんなエポキシパテの使い方を詳しく解説します。
エポキシパテの基本的な使い方
まず、エポキシパテは棒状で販売されていることが多いです。それを、必要な分量をカッターなどで切り取って使用します。この段階ではまだ硬化は始まっていません。
練り合わせて化学反応を開始
次に、切り取ったパテを手で練ります。エポキシパテは2色で構成されており、そのうち一方が硬化剤です。しっかりと均等に練り混ぜることで化学反応が始まり、硬化が進行します。
素手で触っても問題はありませんが、手が汚れるのを防ぐために指サックや手袋を使用するのが望ましいです。
欠けやヒビへの充填と成形
十分に練り上げたパテは、器の欠けやヒビなどの破損部分に直接押し付けていきます。エポキシパテは硬化が早く、数分程度で固まり始めるため、この段階で素早くかつていねいに形を整えておくことが重要です。指や小さなヘラなどを使ってできるだけ滑らかに整えておくと、仕上がりが美しくなります。
硬化後の仕上げ作業
最後に、完全に硬化したパテは紙ヤスリや彫刻刀を使って削り、器の形に合わせて微調整します。硬化後のパテは非常に丈夫なので、削っても崩れることはありません。ここでしっかり形を整えることで、金継ぎの後の仕上げ作業がより美しく映えるようになります。
金継ぎに使うパテを選ぶ際のポイント
簡易金継ぎに使うパテを自分で選ぶ際には、用途に適した製品であるかどうかをしっかり確認することが重要です。
食品衛生法への適合が最優先
食器として使いたい器を修復する場合は、食品衛生法に適合しているかどうかが最大のポイントとなります。市販されているエポキシパテの多くは、食器への使用を前提としておらず、公式には「飲食物が直接触れる部分には使用しないように」と明記されている場合が多いです。
たとえば、よく名前が挙がるセメダイン製のエポキシパテも、公式ではそのような使用を推奨していません。エポキシパテには人体に有害な成分が含まれている場合があり、食器に使うと安全面で問題になることがあります。
そのため、食品と直接接触する用途で金継ぎを行いたい場合は、食品衛生法をクリアしているかを必ず確認しましょう。
一方で、置物や非食品用途の器に使う場合は、そこまで厳密に選ぶ必要はありません。強度や仕上がりの質を重視して選ぶとよいでしょう。
陶磁器対応かどうかを確認する
次に、陶磁器に使用できるかどうかも確認しましょう。パテの中には木材専用やプラスチック専用のものもあり、それらを陶磁器に使うと乾燥後にうまく接着できず、剥がれてしまうことがあります。
製品の説明欄に「石材や金属にも使用可能」と記載があるパテであれば、陶磁器にも対応しているケースが多いです。
エポキシパテとエポキシ接着剤の違いに注意
最後に、エポキシパテとエポキシ接着剤の混同に注意が必要です。ホームセンターでは同じ売り場に置かれていることも多く、誤って接着剤を購入してしまうことがあります。
見分け方としては、パッケージに「エポキシパテ」と明記されているものを選ぶこと、またチューブ型ではなく円柱型でケースに入っている点も目印になります。
以上の点を踏まえて、用途に合った安全なパテを選ぶことが、金継ぎを成功させるための第一歩となります。
まとめ
現代では、伝統的な漆を用いた金継ぎに代わり、エポキシパテなどを使った「簡易金継ぎ」が手軽さから人気を集めています。パテは欠けや割れの補修、形の再現に活躍し、初心者でも扱いやすく、作業の効率化にもつながります。特とくエポキシパテは粘土のように練って使えるため、小学生でも使える手軽さが魅力です。パテ選びでは、食品衛生法への適合性や陶磁器対応の有無、そして接着剤との混同に注意することが重要です。
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金継ぎ暮らし
金継ぎ暮らしは東京を中心に活動しているグループで、年間に1,000個以上の金継ぎを行っています。たくさんの器を直してきた経験はもちろん、テレビ取材や監修、本の出版といったさまざまな実績もある、確かな技術を持った講師が教えてくれるのが大きな特徴です。
すべての道具が食品衛生法基準をクリアしているので、金継ぎした後も安心して食器を使用することができます。教室数も多いので、通いやすいのも強みだといえるでしょう。レッスン内容も、1日完結の体験コースや通って学ぶ本格コースがあります。