金継ぎの基本的なやり方とは?

公開日:2024/01/19
金継ぎの基本的なやり方とは?

「金継ぎ」という言葉を耳にしたことはありますか?近年、多くの人が金継ぎの魅力に惹かれ、ワークショップやSNSを通じて広がりを見せています。

金継ぎの特徴は、修復箇所に金や銀などの金属粉を使ったり、漆の色彩を楽しむことにあります。まるで最初からデザインされたかのように、うつわの金がきらめく様子は、洗練されたおしゃれさと独自の味わいを醸し出すでしょう。また、壊れたら捨てるのではなく、修復して使うという発想は、ファスト文化に対抗する新しい価値観です。

今回は、ワークショップに参加する余裕がなくても、おうち時間を利用して簡単に始められる金継ぎのやり方をわかりやすくご紹介します。

金継ぎとは

「金継ぎ(きんつぎ)」は、日本の伝統的な技法で、割れたり欠けたりしたうつわを漆(うるし)で修復し、継いだ部分を金などで装飾する芸術的な手法です。

金継ぎでは、割れたり欠けたりした陶磁器や漆器を漆で接着し、修復します。漆は、ウルシ科の樹木から得られ、乾燥すると非常に強力な硬化作用を発揮し、破損した部分を強固につなぎ合わせます。

金継ぎの特徴は、傷や継ぎ目を隠すのではなく、むしろ金や銀などの金属粉を使って継ぎ目を装飾し、美しさを引き立てる点です。傷がうつわの歴史の一部であり、修復箇所がうつわに新しい命を吹き込むという考え方が金継ぎの根底にあります。

割れや欠けを漆でつなぐことで、物の寿命を延ばし、破損部分に新たな美しさと価値を与えられます。

金継ぎの歴史

金継ぎの歴史は15世紀の日本に遡ります。具体的な起源は不明ですが、室町時代(1336年-1573年)の茶道具修復にまでさかのぼるといわれています。

15世紀の日本では、茶室や茶道具が重要な役割を担っていましたが、茶器が傷つくことは避けられませんでした。金継ぎが起源したのは、茶道具が重要な役割を果たす中で、傷ついたものを処分するのではなく、新たな美と価値を与えて再利用することが重要視されたからとされています。

修復箇所が金色に輝くことで、その物の歴史や修復の過程が見えるようになり、新しい美を生み出す技術として、金継ぎは今日でも高く評価され、独自の美学と哲学は国内外で高く評価されています。

金継ぎ作業に用意しておきたい材料・道具

金継ぎ作業には、伝統的な方法や手軽な方法に応じて異なる材料と道具が必要です。

共通の材料と道具は、金属粉・純テレピン油・ティッシュ・スポイト・耐水ペーパー・使い捨て手袋・ナイロン製面相筆・消毒用アルコール・マスキングテープ・デザインナイフ・へら・真綿・定盤(塩ビ下敷きやガラス板など)・砥之粉です。

伝統的な金継ぎには、上述に加えて天然の漆・食用油(サラダ油など)・温湿度計・水を入れた小皿・小麦粉・段ボール箱・サランラップを準備します。

また、手軽に金継ぎ作業するには、合成漆、硬化時間が30分以上のエポキシ接着剤・木工用パテを用意しましょう。

その際、合成漆は合成樹脂や有機溶剤を使用して作られた漆風の塗料を指します。天然の漆とは異なり、合成漆は化学的に合成された成分を含んでいるので、成分表を確認して間違えないよう注意してください。

金継ぎのやり方

金継ぎは、修復するうつわの破損状態によってやり方は異なります。ここでは、基本的な金継ぎのやり方を解説します。順番に見ていきましょう。

割れ・欠けの下準備

サンドペーパーを使用してうつわの割れ面の角をやすり、耐水ペーパーやダイヤモンドやすりなどで少し面取りします。

その際、角度は割れ面の角に対して約45°くらいを目安にし、神経質になりすぎず、接着後に凹凸を埋める役割がある「錆漆」が少し入るくらいの溝ができればよいでしょう。

補修部分に生漆を塗る

下準備を終えたら、筆で割れ面に薄く生漆を塗ります。その後、硬化を促進させるために、漆室(うるしむろ)で6時間以上放置し、硬化させましょう。

漆室とは、漆を塗ったうつわを入れて乾燥させるスペースを指します。漆は乾燥する際に湿度や温度の影響を受けやすいため、漆を乾かすために、湿度をコントロールするための環境を整える必要があります。漆の作業環境は湿度60%〜70%、温度20℃〜25℃が適しています。

漆室は木製の引き戸の戸棚が主流で、差し渡しの木の板をかけられるようになっていることが一般的です。加湿しながら乾燥させることで、漆が適切な湿度と温度でゆっくりと硬化し、仕上がりによい影響を与えます。

一般家庭で漆を扱う場合は、手軽に漆室を作る方法として、ダンボール箱の利用が挙げられます。ダンボール箱の底にビニールシートを敷き、その上に湿らせた巾を入れ、蓋をすることで湿度を保てるでしょう。

割れた部分を接着する

割れた部分には「麦漆(むぎうるし)」と呼ばれる小麦粉と生漆を混ぜて作成する接着剤を塗ります。麦漆は、小麦粉と水で耳たぶ程度の硬さに調整し、同量の生漆を追加して、チューイングガムのような伸縮性を持たせましょう。

その後、割れ面に麦漆を竹べらなどで均等に塗ります。その際、マスキングテープなどで割れた部分がズレないようにしっかりと固定することが大切です。

最後に乾燥が十分に行われるよう、マスキングテープで固定したまま湿度と温度を保った漆室に入れて1週間以上放置し、硬化します。完全に固まったら、マスキングテープを外して余分な麦漆を削り、滑らかに表面を整えます。

欠けを充填する

接着後、隙間を埋めるために「錆漆(さびうるし)」を使用し、へらを使って丁寧に埋めていきます。錆漆は、水練りしてまとまった砥之粉に生漆を混ぜたものです。

その後、1日程度で錆漆が硬化します。硬化後、耐水ペーパーなどで水研ぎし、表面を滑らかにします。この作業は仕上がりに大きな影響を与えます。根気よく水研ぎすることで、滑らかかつ、均一な仕上がりを得られるでしょう。

漆を塗る

うつわの接合部分や錆漆で埋めた部分に、筆を使って漆の下地となる黒呂色漆(くろろいろうるし)を塗ります。漆室で1日かけて十分に硬化させた後、耐水ペーパーを用いて塗膜の表面を水研ぎします。この作業を3回繰り返すことで、塗膜が徐々に厚くなっていくでしょう。

金属粉を撒く

黒呂色漆を塗った表面を水研ぎした上に、弁柄漆(べんがらうるし)や呂瀬漆(ろせうるし)を筆でかすれるほど薄く塗りましょう。

最後に、半乾きの状態で丸めた真綿に銀消粉(ぎんけしふん)や金消粉(きんけしふん)をたっぷりと含んで、優しく粉を落としていくように定着させます。その後、漆室で2~3日放置し、完全に硬化したら金継ぎが完成です。

初心者でも美しく金継ぎを仕上げるコツ

初心者でも美しく金継ぎを仕上げるためのコツは慎重かつ丁寧に行うことが重要です。金継ぎは時間を要する作業です。一つひとつの工程に根気強く取り組み、焦らずに慎重に進めることで美しい仕上がりにつながります。

金継ぎ作業の初心者は、平皿や茶碗など口の広いうつわがおすすめです。口が狭く奥行きがあるマグカップなどは手が届きにくく、難易度が上がる可能性があります。その際、素焼きでないものを選ぶとよいでしょう。

初めての金継ぎでは失敗もあるかもしれません。しかし、楽しみながら試行錯誤を通じて、自分なりの金継ぎのテクニックを見つけていくのも面白いものです。

まとめ

金継ぎは、割れや欠損を修復するだけでなく、美しい金継ぎ模様がうつわに新たな価値を与えます。時間がかかる金継ぎ作業ですが、手間暇がかかる分だけ、修復したうつわに対する愛着が深まります。

細かな作業は心を落ち着かせ、時間をかけることで得られる充実感や満足感は、まさにセラピーや癒しともいえるでしょう。修復方法としてほかに類を見ない、うつわの傷や割れを生かして表現する独自性も、金継ぎの魅力です。

また、漆にはさまざまな色があり、金や銀を使わないで漆だけで修復を完了させることも可能です。金や銀はあくまで漆の上に施されるおまけのようなもので、線の太さや細かな模様、修復箇所の仕上げ方には、個々のアイデンティティが表れるでしょう。

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金継ぎ暮らし

金継ぎ暮らし

金継ぎ暮らしは東京を中心に活動しているグループで、年間に1,000個以上の金継ぎを行っています。たくさんの器を直してきた経験はもちろん、テレビ取材や監修、本の出版といったさまざまな実績もある、確かな技術を持った講師が教えてくれるのが大きな特徴です。

すべての道具が食品衛生法基準をクリアしているので、金継ぎした後も安心して食器を使用することができます。教室数も多いので、通いやすいのも強みだといえるでしょう。レッスン内容も、1日完結の体験コースや通って学ぶ本格コースがあります。

東京でおすすめの金継ぎ教室比較表

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